彼の溺愛 致死レベル ゾルック 四人目



ベンチに座り

太ももに乗せた手を
じっと見つめ続ける、みくる。



その手には、
ぽたぽたと再び涙が落ち

みくるは、
その涙を拭こうともしない。






――好きな女の泣き顔って、
  見ていて、こんなに苦しいんだな。



怒りが少しだけ薄らいだ隙間に

罪悪感に似た感情が
流れ込んできた。





――なんで俺、こんなに大好きな女を
  追い詰めているんだろうな?





一生、俺のそばにいて欲しくて。


一生、俺の隣で笑っていて欲しくて。



みくるの父親に近づいて。


借金帳消し分の
大金を渡す代わりに

みくるを嫁にもらうための
契約書まで書かせて。





『俺の娘を、
 本当に幸せにしてくれるんだよな?』


心配そうに俺の肩を掴んだ、
みくるの父親に。



『死ぬ気で、愛しぬきますから』


歯が全部見えるくらい、二カっと笑って

自信満々に答えた、俺だったのに……


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