食堂の白井さんとこじらせ御曹司
 普通です。私、別に普通です。彼氏がいないなんて変ではありません。
「あれ?結梨絵、化粧変えた?」
 長い付き合いの友達にはわかるようです。
 何度か菜々さんにメイクしてもらったので、勉強になりました。もともとのメイクに、少しだけ菜々さんの技法を取り入れています。
「なんかかわいくなったじゃん。好きな人でもできた?」
 長い付き合いの友達です。隠し事はできません。
「彼女がいるっぽいので、ブレーキかけました」
「え~!結梨絵は昔から真面目だもんなぁ。彼女がいたって、片思いするのは別にいいじゃん」
「いやいや、片思いとかすすめないの!別の人、誰か紹介しようか?」
「あ、二人で婚活パーティーとか行ってみたら?」
 彼氏のいない二人。28歳の二人。友達が真剣に提案しています。
「そうですよね……」
 女子高生じゃないんですもん。片思いをずるずるしていられるような年齢でもありません。
「まー、飲もう、飲もうよ!」
「うん、飲む!」
 
 日曜日は二日酔いでダウンしていました。
 おかげで、うだうだと考えるよりも苦痛からのがれることに意識がいっていたので助かりました。

 月曜になりました。
 ラインが届いています。
 菜々さんです。
「どうだった?」
「素敵な店でした。食事もおいしかったです」
 返信を返すとすぐに既読になります。
「あいつ、失礼なことしなかった?」
 ……菜々さんからのメッセージ。
 失礼なことってなんでしょう?
 なぜ、そんな聞き方をするのでしょう?
 他の女性に悪さしたかどうか探りを入れているのでしょうか?
 ……菜々さんはそんな人じゃない。和臣さんもそんな人じゃない。……わかってるのに、分かってるのに……。
 マイナスの方向にしか頭が働きません。
「いいえ、今回もごちそうになってしまいました。申し訳ないです」
「あー、気にしない、気にしない、あいつが行きたいって言った店に、付き合ってあげたんだからって考えればいいんだよ」
「いえ、でも……私も楽しみましたし」
「そっか、楽しかったんだ。よかった!」
 ……。
「今度は菜々さんが和臣さんと行けるといいですね」
 と、メッセージを送って、すぐにラインを閉じます。
 通知音が鳴るけれど、読まずにスマホをカバンの中に入れました。
 準備をして仕事に行かなければいけません。


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