独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
お見合い当日は、朝からあいにくの土砂降りだった。

中庭の木々や花々が雨に打たれるのを窓越しに眺めていると、目が覚めるような青い色留袖を着た母がリビングにやってくる。

つい先ほど、私たちは自宅で着物を着付けてもらい、ヘアセットを終えたところだ。

「琴子、あなたやっぱり赤の振袖にしてよかったわ」

窓辺に立つ私を、母はしげしげと見つめた。

私は母が選んだ、地紋に光沢のある赤い振袖を着ていた。それに金地の袋帯を合わせていて、とても華やかな装いだ。髪型はダークブラウンのロングヘアをふんわりと編みおろし、煌びやかな髪飾りをいくつも付けてもらった。

先日、私が自分に似合いそうな柔らかい色合いの振袖を選ぼうとすると、母が猛反対した。

代わりに勧められた赤は派手すぎて、これでは着物に着られてしまうのでは……と躊躇していると、『琴子は本当に地味好きね。一体誰に似たのかしら』と母は苦笑いしたのだ。そういうわけで私はこの赤の振袖になったのだった。

< 10 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop