独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
「琴子は借金返済のために、実家を手放すことになっても大丈夫かい?」

伯父に訊かれ、私は自分の幼少期に思いを馳せた。

実家の屋敷は私が四歳の頃、父が私と母のために建ててくれたものだった。

至るところに父との思い出が詰まっているから、できるものなら手放したくない。でも我が家にはもう換金できる大きな財産はそれしか残っていないのだ。

「借金を返すためならしかたがないわ」

私は伯父にそう返答するほかなかった。

「でもそうなると母はどうなるの?」

母は住む家をなくし、路頭に迷うのではないか。それが心配だった。

「私に考えがある」

伯父はにっこり笑った。

「考え?」

「ああ」

伯父はうなずきながら、ティーカップを口に運ぶ。どうやらこの場ではその策を明かすつもりはないらしい。

私と透哉さんは顔を見合わせる。

「伯父上にお任せしよう」

透哉さんの呼びかけに、私は小さくうなずいた。

一体伯父にはどんな考えがあるのだろうか。


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