独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
二日後、私のスマートフォンに母から電話がかかってきた。

『急なんだけど、私来月からイタリアで暮らすわ』

母の第一声に、私は目を瞬かせる。

「イタリア?」

『ええ。お兄さまに誘われたのよ。琴子がお嫁に行って寂しくなっただろうし、よければ仕事に同行しないか、って』

まさか伯父が母を日本から連れ出すつもりだったとは思ってもみなかった。

「そうなのね……」

『私、あなたがいたから諦めていたけれど、本当は海外生活に憧れていたの。いつ帰ってこられるかわからないし、お屋敷は売却するわ。それで借金を完済できるはずよ。手続きはお兄さまがしてくれるから、あなたはなにも心配いらないわ』

母の言葉に、私は伯父の意図を汲み取った。そして狙い通りに運んだのだと察する。

伯父は母に借金の話をうまく切り出したようで、母は私に対してなにも恨み言を言ってこなかった。

頭の中はもうイタリアでの生活でいっぱいらしく、世界遺産めぐりをするのだと声を弾ませている。

母との通話を終えると、私はすぐに伯父に電話をかけた。

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