独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
『桐子から聞いたかい?』

伯父に訊かれ、私はうなずく。

「驚いたわ。まさかお母さまがイタリアに行くなんて……」

『なにかを変えるのは環境を変えるのが一番だ。ひとまず国外に連れ出して、私が桐子を金銭的にも監視するよ。なかなか難しいだろうが、私の仕事の手伝いを通じて少しでも自己中心的な性格を治してやれればと思っている』

「でもお母さまは旅行気分のようだったわ」

伯父の仕事を手伝う気などなさそうだった。

『最初はそれでいいんだよ。まずは第一歩を踏み出すことが大事だからね。安心しなさい。これでも私は桐子の兄だ、桐子の取り扱い方は心得ている』

伯父にはとても説得力があった。

伯父は来週中に先にイタリアに戻るが、その前に実家売却のための事務手続きなどは終えていくと言う。なにからなにまで本当にありがたかった。

『次は琴子の結婚式で会おう』

伯父はそう言い残して電話を切った。

< 110 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop