独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
「琴子、お色直しはできたか?」

不意にブライズルームのドアが開き、タキシード姿の透哉さんが入ってきた。

「ああ……やっぱり俺の花嫁は世界一きれいだ」

彼は私に歩み寄りながら、とろける声で囁く。

甘く一途に見つめられ、私ははじらった。

「それじゃあお邪魔しちゃ悪いから、私はこの辺で」

玲於奈さんは気を利かせてくれ、すぐに席をはずそうとする。

「玲於奈、ありがとう」

「こちらこそ。末永くお幸せにね」

笑みを交わす透哉さんと玲於奈さんに、私の顔もほころんだ。

ふたりきりになると、彼は私のそばで悩ましげな表情になる。

「本当にきれいすぎて誰にも見せたくないな」

そういえば玲於奈さんのアトリエで試着しているときも、彼はそんなことを言っていた。

あのときはお世辞だと思っていたけど、今なら本気だとわかる。

普段は穏やかで優しい彼の独占欲が強いのは、私だけが知っている。

幸せで幸せで、結婚式は笑顔で満ち溢れていた。





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