独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
透哉さんは無言で遠くを見据えている。

「あの、透哉さん、もしかして真崎家のみなさまは、私との結婚をお望みではないのでは……?」

昔を懐かしむ余裕などなく、私は単刀直入に尋ねた。

やはり私の家では真崎家に釣り合わないと、そう思い直したのだろうか。

当然かも知れない。父が亡くなり私の家はとうの昔に落ちぶれている。伯父の会社だってまだ経営が不安定だ。真崎家にとって私との結婚はなんのメリットもないだろう。

それに透哉さんくらい素敵な人なら、ほかに花嫁候補はいくらでもいるはずだ。

透哉さんはゆっくりと私を振り向いた。

切れ長の澄んだ瞳がどこか切なげに細められる。

「それは君がビジネスの契約以外に、俺の両親に金銭を要求したからだろう?」

「え?」

思いも寄らない話に、私は固まった。

「君に内密に頼まれ、すでに口座に一億円を振り込んだと父から聞いている。知らないふりはよしてくれ」

透哉さんはなにを言っているのだろう。私はそんな大金を受け取ったりしていない。

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