独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
私はすぐさま否定しようとした。

けれどそれを阻むように、透哉さんは眉根を寄せる。

「一億円の使い道はなんだ?」

「使い道……?」

「ああ。なにに使ったとしても責めるつもりはない。君は早くにお父上を亡くし、俺には計り知れないような苦労もあったんだろう。だが俺が知っている君は真面目で頑張り屋で、こんなけじめのないことをする人じゃなかった」

「わ、私は……」

頭が混乱し、とっさに言い淀んでしまった。

私に失望を露わにする彼に、胸が締めつけられる。

このままではありもしない罪を着せられてしまうのに、どうしていいかわからなかった。

「こちらで君の身辺調査するのは簡単だ。だが俺は君の口から事実を聞きたい」

彼の質問に答えられるものなら答えたい。でも、そもそも事実がないのだ。

とにかく私の口座にお金を振り込んだという彼のお父さまと話したかった。

私の口座を管理しているのは私と母だけだから、すぐに誤解が解けるはずだ。

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