独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
我が家には贅沢品を購入する余裕などないはずだ。

「真崎家からいただいたあなたの結納金があるじゃない」

平然と言い放った母に、私は立ち尽くした。

これからは慎ましく暮らすと話し合ったはずなのに、まさか母が結納金で私物を買い込んでいたとは思ってもみなかった。

「どうしてそんな勝手なことを……」

舌の根の乾かぬうちに約束を反故にされ、私はわなないた。

「勝手? あなたまさか自分だけいい思いをするつもりだったの? なんて冷たい子なの」

「え?」

「真崎家に嫁いだんですもの、贅沢三昧しているんでしょう? 私だってこれくらい許されていいはずだわ」

母は至極当然のような口ぶりだった。

結納金は個人にではなく家に納められるもので、使い道は親が決めるのが習わしだが、それで母の私物を買うのは普通なのだろうか。すんなり受け入れられない私は冷たい娘なのだろうか。

母の言葉に、なにが正しいのかわからなくなる。

ただ私の思いは母には届いてなかったのだと確信した。

どうしようもない虚しさに襲われる。

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