篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。



「……あ、佐藤先生から呼び出しだ。行ってくる」


俺のスマホに関係を持っている女教師から連絡が入って、今から指定された場所に向かう。

当然コイツらしか知らないこと。


「じゃあ、俺らは先に帰っとくな」


「慧、やたらあの先生に気に入られてない?
嫌だったら適当に断ればいいのに」


「ん、別に顔も容姿もそこそこいいし嫌じゃないよ」

「ふーん、本気にさせちゃ駄目だよ?」

「分かってる」


あくまでもそういう関係なだけで、それ以上の事を求められたら、容赦なく切り捨てるだけだ。



俺が一足先に教室を出て行った後、瑞季とちひろがこんな会話をしてたことは知るわけがない。



「……なぁ、慧はこれからずっとあんな感じなのか?昔は真面目で女遊びとか一切しない奴だったじゃん。

高校に入り出してから、急に俺の真似をするようになってなんか不自然だと思わねえ?」


瑞季が顔をしかめて、声のトーンを下げた。

ちひろはメイクする手を止めないまま答える。



「えー、?真似って言うか2年前のあれがあってから、もうどうでもよくなった風に見えるよ。

確かに前の慧の方が好きだったけどさ、私たちが女遊び辞めろって言っても、説得力ないでしょ?」


「それは言えてる……なんとか前の慧に戻してやれるような方法があればいいんだけど」


瑞季がポツリと呟いた言葉は、静まり返った教室の中に消えていった。


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