聖女の汚名返上いたします!私は悪徳大魔女ですが?
「また会えて嬉しいよ。髪をまとめている姿もよく似合う」

 しかし相手は敵どころか、友人よりさらに親密そうに接してくる。シャルロッテはそんなフィオンの態度がまったく理解できない。

 だいたい、ついこの前に初対面を果たしたばかりだ。これが自分に対する嫌がらせとしてわざとだとしたら、それはそれで食えない男だとは思うが。

「約束した覚えはないし、私は私の目的のためにここにいるの」

「わかっているよ。ようこそファートゥム城へ」

 素っ気なく返すが、フィオンはニコニコと笑うだけだ。大魔女として煽ってやろうと意気込んでいたシャルロッテは。毒気が抜かれ脱力した。

 まぁ、相手の情報を掴んでから憎まれ役に徹してもいいか。

 考えを改め、ここはおとなしく相手に従うことにする。以前、通された部屋に再び案内され、ややあってフィオンがシャルロッテを呼びに来た。

 ヘレパンツァーは付き合うつもりがないらしくシャルロッテのみフィオンついて部屋を出ていく。

 以前はさっさと城を出て行ってしまったので城の内部構造までは把握できなかった。この機会にとあちこちに視線を飛ばす。

 廊下では何枚もの幾何学的なステンドグラスが太陽の光を通し内部で上手く反射させ、一定の明るさを保っている。宝飾品の類はあまりなく、逆に細やかな彫刻が至る所に施されていた。

 それにしても本来なら招かれざる客として王家側の目をかいくぐりながら城の内部に潜入するはずの自分が、こうも堂々と城内を歩いているのはシャルロッテ自身も奇妙だった。
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