聖女の汚名返上いたします!私は悪徳大魔女ですが?
「むしろ飛ばされないとでも思った? 私は伝説の大魔女になるんだから」

「できれば君からの熱視線は正面から受け止めたいね」

 さらりと返して前を向くフィオンにシャルロッテは目を丸くする。

「……ちなみに今、どこに向かっているの?」

「ラルフ王子のところさ。君に会いたがっている」

 少なくともフィオンとは違う意味であってほしいのが本音だ。ついに王家の人間に直接会えるとシャルロッテは期待を高め、歩を進めた。

 通された謁見の間はさすがに息を呑むほどの豪華絢爛さだった。白と金を貴重とし、調度品のすべてに王家の紋章が記され、眩《まばゆ》い光を放っている。

 視線を上から下に動かせば、天井はアーチ形で王家の歴史をモチーフにした絵画が描かれ、大きな柱の下には、厳つい顔をした男たちが壁に添って並んでいる。

 そして中央の玉座に堂々と座る男から声がかかった。

「フィオン、この女か」

 冷たさを孕んだ声色だった。肘置きに、肘を突いて冷ややかな瞳でこちらを見下ろしているのは、ラルフ・ドリッテンス・ファートゥム。 現国王の三男で、ファートゥム家の第三王子にあたる。

 白い肌に細い金の髪が柔らかく揺れ、アイスブルーの瞳は相手を牽制するには十分すぎるほどの目力がある。天井に描かれた絵画から飛び出してきたとでもいわんばかりの美青年だった。

 フィオンは恭しく膝を折る。年齢的には彼の方が上に見えるが、そこは身分の差だ。
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