聖女の汚名返上いたします!私は悪徳大魔女ですが?
「私、シャルロッテの部屋でこれを見つけたの」

「なにこれ、気味が悪い」

 紙に描かれたものを見た途端、ペネロペの顔が不快に歪む。一体、なんなのか。身にまったく覚えがないのでシャルロッテは紙の内容が気になってしょうがない。

 その意を汲んだわけではないだろうが、ペネロペは描かれている方の面をシャルロッテに突き出した。

 そこには黒く滲んだ幾何学的な図形と文字が羅列している。シャルロッテは大きく目を見張った。

「お母さま、これは相手を呪う魔法陣よ。シャルロッテが読んでいた本に書いてあったの。この子、お父さまに続いて私たちのことを……」

「恐ろしい! やはりあなたは我がシュヴァン公爵家に(わざわい)をもたらすのね」

 勝手に話を作り上げ、進んでいく方がよっぽど恐ろしい。

 一方、憎悪と畏怖の眼差しを向けてくるクローディアとペネロペに、シャルロッテは内心胸を撫で下ろしていた。

 よ、よかった。妙な抒情詩(ポエム)をでっちあげられたわけじゃなくて。

 精神的ダメージなら後者の方が抜群だ。

「なにを笑っているの!?」

 動揺せず薄ら笑いを浮かべるシャルロッテに痺れを切らしたのか、ペネロペが声を張り上げる。

「ロベール・シュヴァン公爵が亡くなった今、妻である私ペネロペ・シュヴァンが宣言します。シャルロッテ・シュヴァン。あなたはロベール公爵およびその家族に危害を加えようとした罪で、シュヴァン公爵家から除名、称号剥奪、およびこの館からの追放を命じます」

 ペネロペの隣で、クローディアが微笑んでいる。わかりやすすぎる展開だが、ここにきてシャルロッテはわずかに狼狽(うろた)えた。
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