聖女の汚名返上いたします!私は悪徳大魔女ですが?
「そ、それは困るのですが」

「今更、言い訳は無用よ」

 シャルロッテの(すが)る態度にペネロペは満足げに微笑む。一秒たりとも猶予はないといった面持ちでペネロペからさっさと出ていくように促される。

「シャルロッテ、どうしてこんなことを……」

「台詞と表情がまったく一致していないわよ、クローディア」

 ついに本音が声に出た。クローディアは再び両手で顔を覆い泣く素振りを見せ、ペネロペが彼女を支える。

「父親を呪い殺し、義理の姉になんて態度なの? この極悪非道な娘め!」

 極悪な形相なのはペネロペの方だ。

 っていうか、私がお父さまを呪い殺したのは決定なの?

 あっという間にシャルロッテは簡単な荷物ひとつだけで屋敷を放り出された。

 シャルロッテや母に仕え親しかった使用人たちは徐々に解雇され、今やこの館の使用人はペネロペやクローディアの腹心ばかりになっている。

 ペネロペに逆らい、シャルロッテを庇う者などいるはずもない。突然、住む場所も爵位もなにもかもが理不尽な方法で奪われ、さすがのシャルロッテも呆然とする。

 なにこれ。こんなことってある!? なんて、なんて……。

 門を閉められ、屋敷の前でひとり肩を震わせたシャルロッテは身を縮めた。そして右手に力を入れ握りこぶしを作る。

 好都合なの! 最恐の大魔女にぴったりの境遇じゃない!

 そのまま上に高く腕を突き上げ、シャルロッテは今日一番の笑顔になった。
 
 公爵令嬢の肩書きは実はシャルロッテ自身も不必要だと感じていた。欲しいのは皆が平伏(ひれふ)す伝説の大魔女の称号だ。そのために日々、地下の書物庫で魔術書を読み漁ってきたのだ。

 だからクローディアが持っていた魔法陣がすぐに偽物だと気づいた。適当なのもいいところだ。あれでは悪魔どころか下級の使い魔すら召喚できない。
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