生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
「気配を消すのにも体力を使います。そろそろ私の限界も近くなってきたようで。無駄な抵抗などせず大人しく私について来てもらえますよね?」

差し伸べられた手を握り返すことなく、

「知らない人にはついていくな、というのはどの世界でも常識ですよ?」

と、ハルルは挑発的に笑った。

「ほう、それはどこの世界の常識ですかな?まあ、何と申されようともそんな悠長なことを言っていられる時間はないのですよ」

胡散臭い笑顔を浮かべていたモノクル紳士に、ほんの少しの焦りが見え始めた。

「ハルル様はご存知ないかとは思いますが、この島の結界は、外からの攻撃にはめっぽう強いのですが内側からの攻撃には案外脆いのです」

このモノクル紳士、もといモノクル腹黒策士は、暗に島の結界を今すぐにでも消滅させると言いたいのだろう。

「破壊は困ります」

「では、ご同行願えるのですね」

返事を待たずに、モノクル腹黒策士はハルルの腕を掴んで歩きだした。

ハルルは、絶対に大丈夫だと思うことしか返事をしないし、言葉にはしない。

言霊を信じているし、自分が発した言葉を逆手に取られることがあると知っているからだ。

現に、”一人の時間も必要”なんてウッカリこぼしてしまったがためにこんなことになってしまっている。


どこに連れて行かれるのだろう?と、島を一度も出たことのないハルルは不安に思っていたが、ハルル一人のためにこの平和な島のみんなを巻き込むわけにはいかない。

何か対策を取らなければ、と考えながらモノクル腹黒策士に引きずられていると、いつの間にか森の外まで出ていた。 

「では、参りますよ?」

「っ・・・ハルル!」

策士の合図の言葉と同時に、エミリアの家の方向からハウルが駆けて来るのが見えた。

「・・・ハウル!」

「ムーブ(転移)」

ハウルの顔には、ハルルの手を引くモノクル腹黒策士の様子を見た驚きと焦りがアリアリと浮かんでいた。

あんなに慌てた顔初めて見たな〜、なんてハルルは呑気に考えていたが、一瞬でどこかに連れ去られてしまっていた。
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