生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜

召喚

確かにほとんど年をとらないレザルスがロゼレムの側にいれば不審がられるだろう。

だからといって、なぜ味方であるはずのハルルまで欺く必要があったのか??

「どうしてそんな大切なこと私にだけ内緒にしていたの?そんなに信用なかった?」

淋しげに眉間にシワを寄せるハルルをすかさずミシェルが左側から抱きしめた。

「ごめん、それは僕が“阿吽の番の儀式“を選んだせいなんだ。僕が・・・ハルルに愛される道を選んだから」

「ふふ、ミシェルは前世のハルルにも生まれた時から夢中だったものね」

そう言って笑ったのは、ミシェルとカノンの母親でハルルの育ての親であるマリリンだった。

「生まれた時・・・から?」

「ええ、“阿吽の片割れ“の資格を持って生まれたハロルド家の直系男児は、生まれた時から大人並の知識を持って誕生するの。そうね・・・言ってみれば両親が現世で獲得した知識がそのまま引き継がれるというのかしら?あっ、だけど親の感情や個人的な記憶は引き継がれないから安心してね?」

「チート・・・」

なんとチートな能力なのだろうか。

まあ、前世の知識を持ったまま今世に転生したハルルは大した力がないのは気になるが・・・ミシェルの驚異の天才ぶりの背景にはそのような秘密があったというのなら頷ける。

「それで、ミシェルが私を選んだっていうのは・・・」

「それにはヤエルが持つ能力と家系が担う掟に関係がある」

ハルルの疑問に答えたのはロゼレム。

「ヤエルの実家は魔女の家系だ。魔女はこちらの世界で20歳を過ぎたらタイミングを見計らって2年間異世界に修行に行かなければならない。ヤエルが選んだのは地球での修行だったわけだが、地球での10年はこちらでの1年に該当する」

「じゃあ、八重さんはあのとき亡くなったのではなくてこちらの世界に戻ったってことなのね?」

「そうだ。ヤエルは地球時間の20年をあちらで過ごした。人物設定はヤエルが自由に選択できるのだが、私の我儘から中年の女性になってもらった。何せ恋人である私から2年も離れるのだ。若くて綺麗なヤエルのままだと変な輩に目をつけられるかもしれなかったからな」

そう言ってドヤ顔をするロゼレムもミシェルに負けず劣らず独占欲が強いらしい。

聞いてもいないのに、今世の両親の惚気話を聞かされるとか、こちらの身にもなって欲しい。

そうやって顔をしかめていると、ヤエルが何もかもわかっているような顔で

「私が地球に渡ったのはこちらの年齢で23歳の時よ。波瑠ちゃんに出会う直前に50歳のおばさんになってあちらでの修行を開始したの」

と言った。

そうして、ヤエルもとい八重さんのびっくり地球の大冒険?話が始まったのである。


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