生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
ロゼレムと愉快な仲間たちが王位継承権を放棄しスチュアート島に移住してまもなく、ヤエルも彼らとともに住まいをこちらに移す予定だった。

ロゼレムの幼なじみで恋人でもあったヤエルだったが、例にもれず人のものを欲しがるメンデル現国王に目をつけられるという不運に見舞われた。

もちろん、ロゼレムもヤエルも激しく抵抗したが、末席とはいえ王位継承権を持つロゼレムと魔女の家系のヤエルが合わさることに危機感を覚えたメンデルの母(皇后)に押し切られ、離島に渡ることなくメンデル現国王の第7王妃として召し上げられることが決定した。

もちろん、ヤエルとロゼレム側が抵抗をやめたわけではなかった。

結婚式の当日、つつがなく式と披露宴を終えたヤエルは、メンデル現国王との初夜を待つ部屋で恐れ多くも自殺を図った。

部屋に残された遺体を見て、メンデル国王は

「なんと、き、気味が悪い。早々に捨て去れ!」

と、ろくに確認もせずに第7王妃の部屋を立ち去った。

元々、ロゼレムを困らせたかったのと、美しいヤエルをちょっとだけ味見してみたかっただけのメンデル現国王には、ヤエルが自殺しようとどうなろうと、あまり関心がなかったこともある。

しかし、一番は、戦の経験もなくのほほんと暮らしてきたメンデル現国王にとって、見るに耐えない凄惨な現場だった、というのが、早々に立ち去った理由だった。

どこまでも最低で情けない男である。

実際、部屋にうつ伏せで倒れていたヤエルは、魔法で息が止まっているように見せていただけだったのだが慌てるお馬鹿なメンデル国王に見抜けるはずはなかった。

しかも、細部までリアリティにこだわったヤエルは、実際の獣の血を身体や床にぶちまけ悲惨な亡骸を演じる拘りよう。

もちろん、当時ヤエルの部屋に配置されていた侍女や護衛もロゼレムの手配した味方であった。

国王に言われた通り”素早く”第7王妃の遺体を片付けるのは簡単である。

その後、ヤエルの準備したリアルな獣の血臭と血痕に満ちた第7王妃の部屋は・・・呪いを恐れたメンデル現国王により密閉され”魔女の呪いの籠もる部屋”として、以降開かれることはなかった。

てな具合に、順調に王都を脱出したヤエルではあったが、その姿を避難先のスチュアート島で確認されたのでは早々に足がつく。

一番安全なのは、魔女の家であるヤエルの実家であったため、しばらくはそこに居候することに決めた。

しかしもう一つ、ヤエルには、いつかは異世界に2年間の修行に出なければならないというやんごとなき事情があった。

3ヶ月後。

しばしの別れさえも拒むロゼレムをどうにか説得して、ヤエルは一人、瑠璃色に輝く地球、科学の発展した魔法のない異世界に飛び立つことを決意するのであった。

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