生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
「で、そのジョン様はどこにいるの?」

「今はまだ王都の騎士団に所属しているわ。もうしばらくしたら退団してこの島に来る予定なの」

頬を染めて微笑むマリリンは恋する乙女のよう。

昼メロ韓流展開とはいえ、マリリンお義母様が女好き国王に弄ばれていなくて良かった、とハルルは安堵した。

「ハルルは優しいね。母上やカノンのことまで心配してあげるなんて」

「ハルルはミシェルと違って優しいんだから当たり前でしょう!?」

ガルルと牙を剥くカノンと、相手にしないミシェル。

うん、間違いなく血の繋がりを感じる。

「日本でのことやこれまでの経緯はなんとなく把握できたわ。で、阿吽の番の話の詳細は?」

そう、それが本題だったはず。

もちろんプロローグは大事だが、ミシェルとカノンのせいで随分横道に逸れたように思う。

「阿吽は、人や環境から邪気を払い悪霊から守る神の神使だ。サギュアというより、我々にとっての邪気はメンデル国王ならびにその第3王妃だといえる」

ハルルの祖母であるモリーと祖父の話、そしてロゼレム、マリリン、ひいてはミシェルに降りかかった災難を鑑みても、その事実は間違いないだろう。

「母の遺言を胸に、私はレザルスという阿吽の片割れを召喚し、家族と親しき仲間達を奴らの悪意から守ってきた」

王都でのことはわからないが、このスチュアート島に関して言えば、ロゼレムの言葉通りだとハルルは知っている。

この国一番の魔術師ルグランも破れないくらい完璧な結界を張り、島の人達、というよりミシェルやマリリン達を守ってきた。

「だが、通常の阿吽の守りの効果は数十年。しかもその有効期限が近くなると効果が弱まるのだよ」

なるほど、守りの効果が弱まり、結界に緩みが生じたために、ルグランにその存在を感知され、簡単に侵入を許してしまったのだろう。

「結界を維持するためには、神気を持つ新たな阿吽の存在が必要だ。通常、阿吽の片方は常にサギュアに生まれ落ちるが、番を求めるとなると異世界召喚しかない」

ロゼレムの血を引き継いだミシェルにはその神気の半分が宿っていた。

番以外の阿吽の片割れを選択するのであれば、番よりかは簡単にサギュア国内から召喚できたという。

「阿吽の番には制限がいくつもあり、単なる片割れを召喚するよりもずっと困難だ。しかも番を召喚できる機会は18年に一度。ブルームーンの満月が出ている夜のみに限定されている」

竜人であるレザルスの召喚にも、相手の同意といった難関が待ち受けてはいたが、番の召喚に課せられる条件に比べれば比較にもならないらしい。

「なんでそんな厄介な選択をしたのかって顔をしているね?ハルル」

微妙なハルルの心情を察知したのか、ミシェルが不敵に微笑んだ。

「そ、そんなこと・・・」

「そこは、二人きりになってから後でじっくり教えてあげるね?」

顔をギリギリまで近づけてくるミシェルがヤバい。

両親や親族、知人の前で、これ以上の男女の接触は遠慮したい。

「わ、わかった。お父様、続けて」

危険を察知したハルルは、ロゼレムに助けを求めることで、微妙な空気を一新させようとした。

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