生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
「阿吽の番の選択云々は長くなるからミシェルに任せるとして、これからのことを話したい」

話をミシェルに任せた挙げ句、大事なとこまで端折るっていうの?!

ハルルは、まさかのロゼレムの暴挙に唖然としたが、周りを囲む家族や親族の疲労した様子を見て、やむなし、と口をつぐむことにした。

阿吽の儀式を終えたハルルとミシェルは、呑気にもイチャイチャラブラブモードを展開した挙げ句、スヤスヤと睡眠を貪った。

しかし、ロゼレム、マリリン、カノン、ヤエルらの顔色は冴えず、目の下に隈を作っている。

ハルルの誘拐事件からこっち、心配させ続けていたに違いない。

「わかった。詳しいことはミシェルから聞く。お父様もみんなもとても顔色が悪いよ。睡眠不足は体に良くないから、ルグランやハルト王子の話も夜にしましょう」

と、ハルルは労しげな顔で微笑んだ。

「ああ!なんて私のハルルは優しいんだ。隠し事をしていた我々を恨むわけでもなく、そんな労りの言葉をかけてくれるなんて天使なのか!」

「伯父上、やめてください。いくら血が繋がっているとはいえ、ハルルは年頃の婚前の女性で僕の番ですよ」

ミシェルからハルルの体を剥がしにかかろうとするロゼレムを、ミシェルが容易に払いのける。

「それが仮にも養父にかける言葉や態度なのか?!」

「まあまあ、あなた。ミシェルはこうなる日をずっと待っていたのよ。ふたりきりにさせてあげてもバチは当たらないわ」

ムム、と愛するヤエルと引き離された過去(たった2年だが)を持つロゼレムは、ミシェルの心情を思うと無下にはできずに悩んでいるらしい。

「そうだな、他の皆も昨日から十分な休息を取れていないことは間違いない。ハルルも一度に複数人からこんな壮大な話を聞かされても混乱することだろう。今夜、また改めて場を設けることとする」

この場に居合わせた全員が首を縦に振った。

眠気も限界に近いのだろう。

「波瑠ちゃん、いいえ、ハルル。疑問はたくさんあると思う。でも私達を信じて。わからないことにはすべて答えるわ。だから遠慮なく何でも聞いてちょうだいね?」

ソファから立ち上がり、ハルルの頭を撫でながら、ヤエルは悲しげに笑った。

隠し事をして辛かったのはヤエル妃も同じなのだと、八重を知るハルルは簡単に理解した。

「はい。お母様」

ハルルの返答に、涙を浮かべたヤエルを同じく立ち上がっていたロゼレムが抱きしめていた。

「本当の戦いはこれからなのだよ。今はまだ体を休めておきなさい。ハルル、また夜にな」

ゾロゾロと部屋を出る一同を見送りながら、ハルルはそっとため息をつく。

本当の戦いとは、メンデルやハウル、ルグランが関係することでもあるのだろう。

平穏な日々の終わりを告げる足音は、こんなにも身近に接近していた。



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