その後のふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「ていうか、知ってたの? あの人がここの在校生だってこと」


美月の問いかけに、わたしは勢いよく首を振った。


「……ううん。今、初めて知った」


マンションから駅までの道のりだけでなく、その先の目的地まで一緒だったなんて。

ものすごい偶然だ。

ちっとも考えなかったよ。



……それより……。

確かに大学生くらいだとは、思っていたけど……。


わたしは、手に持ったままだったパンフレットに視線を落とす。

先ほど七瀬さんが出てきた教室のあった場所を、地図で確認する。


——医学部エリア。



……に、似合わない……。



しばらくその文字を見つめてから、わたしはなんとも言えない感情を抱いて……。

パンフレットをたたみ、鞄の中へとしまった。


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