トライアングル 下
亮輔が梨緒に連れて来られたのは先程の"銃撃戦"で
亮輔が身を潜めていた2階の部屋。
バズーカの破壊で部屋中は様々な破片、コンクリートと鉄で出来た壁には所々穴が空き、中からはみ出るように折れ曲がった金属が突き出る。
自分がそこに居たとは信じ難いほど瓦礫の山と化した
その部屋。
その奥には全然気づかなかったがモニターのようなものと
文字の並んだパネルがある。
おそらくこの部屋は何かを確認するか操作をする部屋だったらしい。
しかし、モニターは無事のようだが、パネルは部屋と同様に、配線やバネが飛びてて見るからに壊れている。
そのモニターの前で立ち止まった梨緒。

モニターの電源らしき赤いスイッチをつける。
「これを見て!」
ビン!
音を立てモニターが映像を映し出す。


梨緒と亮輔が通う泉姫中学。
先程まで"野球"で戦っていたそのステージ。
グラウンドの上空。
機嫌の悪そうに轟いていた雷鳴と、漂っていた雷雲。
その雷雲をボワッと吹き飛ばし
その雲に隠された"もの"が姿を現す。


亮輔が見た"もの"。
それは空を覆い隠すほどの巨大な鉄の塊。
巨大すぎて全貌が掴めないほどが大きな円盤のような塊は
空を包み、
所々スポットライトのような光が地上を照らす。
「宇宙船!!?」
映画や特番などで見たことがあるその姿に
すぐさま"それ"が何であるかの察しがつく。
しかし、グラウンドと比較してもおおきい
そのスケールの違いに圧倒される。


ーーその宇宙船内ーー
大きなモニターには泉姫中が映し出されている。
そのモニターがあるコックピットのような所では
中央の高台を中心にいくつも席が設けられ
そこには銀色のヘルメットを被り、タイツのようなものを着た戦隊ものに出てきそうな"THE戦闘員"の格好をした
宇宙人がセカセカデータ処理のような仕事をこなす。
ウィーン!
その中央の高台。奥の自動ドアから現れたのは、
「!お帰りなさいませ!女神様!!」
青いドレスを纏った美しい姿の"女神"。
戦闘員たちは皆、起立をし、敬礼で女神を出迎える。
「皆の者。ご苦労。」


「女神が地球侵略を企てる宇宙人!??」
梨緒の説明に亮輔があまりに奇抜な突拍子もない展開に
声を大にする。
「ええ。」
亮輔が見つめる梨緒の横顔は冷静に映像を見つめる。
その梨緒の冷静さに、抜かれた度肝を戻し、
亮輔は冷静に考えてみる。
そういえば確かに初めは女神の能力に疑問を持った。
しかし、見た目の女神らしい風貌、神がかった能力。
人外ではないと理解すると先入観で
『彼女は女神だ!』と、そう思い込んでいた。
その他に決定的にさせたのは、、、


「しかし、わらわの作戦は完璧であったろう。」
女神は宇宙船で勝利の演説を始める。
「人間というものは"神"を信仰する。」
高台から語り部のようにフラフラと歩きながら饒舌に続ける。
「わらわの力、テクノロジー、人外であるものを神の能力と思わせる事。それが計画のみそ。」
「まずわらわの能力、心眼で考えている事を読む事。」
「相手の読んだ情報をすぐに戦艦に伝送。」
「皆の協力ですぐさま適した場所を特定。テレポートでその場所へ移動。同時に服装や道具も適したものを用意。」
「まず、能力を見せる事で『この人は人間ではない』と思わせる。」
「しかし、それだけではまだ"神"と信じるまでには満たない。」


「宇宙人だとしたら、地球の知識が豊富すぎる!」
そう!この地球人としての知識。それで信憑性が増す。
亮輔が抱えた疑問を梨緒にぶつける。


「この"インターネット"というのは便利でのう。地球の情報が何でも分かる。」
宇宙人の一人が画面に"yahoo!"を開く。
「これによって手に入れた情報を逐次、戦艦からわらわの脳へテレパシーで送らせる。」
女神が人差し指でおでこをコンコン叩く。
「それを語って地球外という認識を完全になくす。」
「さらに!!」


「あと、宇宙人にしては人間味がありすぎる!」
人間味というのは文化。人柄。人間らしさ。
それを出せてる段階で宇宙人ではない!
亮輔が必死で訴える。


女神が壇上でクルッと舞ってみせる。
すると、女神のドレスがフリルのついたメイド服に変わる。
「おおお〜〜〜!!」
周りからは拍手と男臭い、野太い喝采が湧く。
「"コスプレ"というのが流行っているのであろう?」
すました顔で頬の横で人差し指を立て、艶かしく
少し身体を傾けポーズを決める。
「『いつもすましているけどふと見せる隙』というのに
『萌える』というのも学習しておる。」
決めポーズのスカートがフワッとそよ風の様に舞う。
少しチラッとだが白い透き通った綺麗な腿とスカートの隙間からパンツが見えた。
そのスカートを風に抵抗して抑えるように慌てて隠し、
顔を赤らめる。
「!!」
宇宙人の視線が一点に女神に釘付けになる。
顔を赤らめた女神が困ったような表情で上目遣いに問かける。
「見た?」
宇宙人全員が赤面する。
「見てません!!」

< 8 / 37 >

この作品をシェア

pagetop