私に恋を教えてください
口ごもってしまう柚葉の頭を須藤はいつものように、ぽん、と撫でた。
「じゃあ、顔は見ないから。頑張って」

「か、駆琉さん……」
何とか、頑張って名前を呼ぶことは出来た。

蚊の鳴くような声だったと思うのだが、須藤は柚葉の頭を撫でる。
とても、満足そうだ。
柚葉はホッとする。

自分が呼ばれて嬉しかったように、須藤も、呼ばれて嬉しかったのだと理解できたから。

「良くできました。さて、行こうか」
「はい」

笑顔で差し出された手を、柚葉も笑顔で握った。
少しづつ、進んで行けばいい。

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