私に恋を教えてください
ヤキモチとは……
ヘラヘラ笑っている侑也と、怒っている須藤と困っている柚葉が、ホテルのロビーにいた。

事の起こりは『ITコンベンション』である。
年に一度、隣の県の大きな展示場で開かれるそれは、IT系のイベントとしては大きなもので、そこに出られるだけでも箔がつくようなイベントだ。

柚葉の会社『エンジニアリング・コンサルティング・ファーム』は毎年そこに参加しており、中でも、常務である侑也は得意分野であることもあり、直接参加して時には大きな契約を取ってくるようなイベントだ。
今回は侑也はそのイベントの中で、他社のITアドバイザーとの対談などがありホテルを取っていた。

イベントは2日間で準備のため、社員の何人かは前日入りする。
そのため侑也や開発関連の部署、またマネジメント事業部や営業部の一部はホテルを取ってその2日間は自宅に帰らない。

イベントは全国はおろか海外からも人が来るので、さほど都会ではない展示場近くではホテルは埋まりほとんど取れなくなる。
そのため毎年参加を決めている会社では、去年のうちに『来年も予約よろしくー』と部屋を抑えてしまうのだ。

柚葉も予約の確定のメールや電話で、侑也の部屋が抑えられていることは確認していたが。
自分の部屋も必要とは思っていなかった。
それもこちらに到着してから気づいたのだ。

「え……と、いいですよ。私通勤しますから」
もともとそのつもりだったのだし。
先程から柚葉はそう言っているのだが。
< 121 / 277 >

この作品をシェア

pagetop