私に恋を教えてください
須藤はその綺麗な顔を曇らせた。
「大きな影響は、今回はなかったから良いけれど、場合によっては社名に傷がつくことがあるからね、気をつけて下さい」

「はい。すみませんでした」
「うん。今後、気をつけて下さいね」

──怒られてしまった……。
ミスがあれば、怒られるのは当然なのだけれど。

柚葉は肩を落としながら、事業部のある階から、役員室のある階に向かった。

柚葉は自分が人より、若干おっとりしていることは自覚している。
だから、より確認はしっかりしていたつもりだったのだが。

もっとしっかりしなくては、ってことね。

常務の部屋の前に立って、柚葉は先程までの沈みがちな表情に力を入れて、ぐっと奥歯を噛み締めた。
そして、きゅっと口角を上げる。

いくら自分の気持ちが落ち込んでいても、担当である常務に、暗い顔を見せる訳にはいかない。

よしっ!
柚葉は常務の執務室のドアを叩いた。
敢えて、明るい声を出す。
「失礼します」
「はーい」
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