私に恋を教えてください
「は⁉︎」
「え⁉︎」
「しない」

駆琉がその手を引き離す。
「聞いていましたか? 俺の婚約者なんですよねえ」
「僕のがお金持ちですよ? 柚葉ちゃん」
「え……と。私その、あまりお金は……」

柚葉がそう言うと、クリスは一瞬目を見開いて笑顔になった。

「たまらんっ! 可能なら嫌いにさせて欲しい! なんで、こんなに奥ゆかしくて可愛いん⁉︎ 僕の周りの子ぉらなら、金持ってる言うたら飛びついてくるけどなあ」
「柚葉をそこら辺の女と一緒にするな」

「いや、でも言うても、まだ婚約しているだけで結婚しているわけではないんやし。柚葉ちゃん、まだ間に合うで。僕にしとき」

なかなか、諦めないクリスなのだった。

えーと、明日もこの方と一緒になんですよね……。
ずっとこの調子なのだろうかと思うと、意識を明後日に飛ばしたくなる柚葉である。

食事は今日はタワーの最上階にあるフレンチレストランの個室を予約してあるというので、みんなで移動する。

移動が少ないのは、柚葉も助かる。
しかしクリスは、少ししょんぼりしていた。

「和食が食べたかったのに……」
「天ぷらか? 寿司か? 日本のフレンチ舐めるなよ? まあ、でもそう言うかなと思って、明日は懐石を予約してある。言っておくけどな、クリスが今日泊まる宿は本来なら、半年先まで予約がいっぱいのところなんだぞ。それをありとあらゆる伝手を使って確保したんだ」
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