私に恋を教えてください
悠真の事は実は成嶋始め、前職であるリサーチ&コンサルティング社でも惜しいとは言われたけれど、家業でもあれば正直否とは言い切れないし、悠真もいずれは戻らなければいけないことは分かってはいた。

それに求められることは、素直に有難いと思ったこともあるし、何より叔父が『そろそろいいだろう?』と笑顔で悠真に言うから。

叔父も他社から戻ってきた人材だ。
もちろんトラストに帰ってきてからは、榊原トラストにこの人物あり、と言われるほどの人物である。

父親である貴広はカリスマ。
叔父の貴志(たかし)は、音に聞こえる優秀な人材で、悠真自身も貴広による英才教育を素直に吸収できるほどの人材、となればこの会社も安泰であることは間違いのないことなのだろう。

そんな中、今行われているのはその悠真の一番上の娘である榊原柚葉(さかきばらゆずは)の就職祝いの場なのだ。

「柚葉ちゃんはお母さんのサロンのお手伝いでいいんじゃないかな?」
貴広は柚葉に向かってにっこり笑って、そう言った。

柚葉の母であるさくらは、悠真が持っているマンションの一室を利用して、サロンを開いている。

自身が悠真の奥さんとして、勉強してきたことを学べる場としてマナーや料理、様々なコーディネイトを、時には自分で、時にはプロの講師を招いて生徒に教えている。
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