私に恋を教えてください
あなたのことを考える
「ただいま、帰りましたー」
役員である侑也に付き合って、最後までパーティ会場にいた柚葉である。

リビングでアイスを食べていた透悟がスプーンを咥えて出迎えた。
現在大学生の弟はすでにくつろぎモードだ。

「お疲れ様。お帰りなさい。ゆーちゃん。アイスあるよ」
「あら、美味しそうなのね」

「俺のは、チョコミント。ゆーちゃんの好きなクッキークリームもあるよ」
「美味しそう。お食事はしてきたけれど……」

「俺が作ったやつだよ?」
にこっと笑って、透悟は柚葉の顔を覗き込む。可愛らしい弟の表情に、柚葉は弱い。

「じゃあ、頂こうかな」
「すぐに取ってくるね」
嬉しそうに透悟は、キッチンに向かった。

柚葉の弟である榊原透悟の趣味は、お菓子作りであったりする。
子供の頃からの趣味なので今は相当な腕前であるのだが、本人にはあくまで趣味らしくパティシエなどになるつもりはないらしい。

『趣味だからどこまでも追求して楽しく作れるんじゃん。これが仕事になったら、思い通りに出来ないしそんなのはつまらないからね』と本人は言っている。

透悟は子供の頃から、そういうところがあった。
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