私に恋を教えてください
妙にしっかりしているというか、きちんと物事を冷静に見つめられる、というか。

そういうところは父親に似たのかもしれないと、柚葉は密かに思っていた。
父親である榊原悠真は子供の頃から落ち着きがあって、冷静な人だったと聞いている。唯一冷静さを失うのは、最愛の妻であるさくらのことだけだ、と。

はいと器に盛り付けたアイスクリームを柚葉に渡して、透悟はいつもと柚葉の様子が違うことに気付いた。

「ゆーちゃん、熱ある?」
「え?多分ないと思うけど」
「でも、顔が少し赤いよ」
透悟が柚葉の額に手を触れる。

「少し、体温が高いような気がする。ちょっと待ってて、体温計持ってくるから」
顔が赤いってそれは……。

つい、考えてしまうから……だと思う。
彼のことを。

初めて会ったのは、エレベーターでの事だ。
須藤がそれを覚えているかは、分からない。
けれど、大人の男性ってこんな感じなんだ、と意識した人だ。

だから第一印象はただ、素敵な人だなと思ったくらいだった。

背が高くてスーツが似合って、エレベーターを何階ですか?と聞いた柚葉に『IDがないと押せないでしょう?』と柔らかな表情で言った。
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