大人になってもまた君と
「はる、こっち向いて」
……いつもは俺様の命令口調のくせに、やたら優しくて、そのお願いに従ってしまう。
今日何度も重なったであろう視線。
だけど、一向にそれに慣れることはなくて、射抜かれるような強い眼差しから反射的に逃げたくなる。
それを彼は許してくれない。
「しばらく言ってやんねぇから、ちゃんと聞いとけよ」
「な、にを……」
突然、ふっと、彼の顔が耳元に近づいた瞬間、温かい柔らかな息がかかって、ただでさえ働かない頭が真っ白になった。
そんな中、直感でわかったのは、彼が言うことに全力で耳を傾けなければいけない、ということだけ。
そして私の全ての意識を、彼の吐息がかかる耳へと集中させたとき、彼から発せられたのはただ一言。
「愛してる」
その言葉を聞いた途端にぶわっと、全身が赤くなったんじゃないかと思うほどの熱を帯び、次に、嬉しさで胸がいっぱいになる。
こんな特上のセリフは付き合って以来、初めて言われたもの。
恥ずかしいけど、でもそれ以上に嬉しくて、幸せで、目の前にいる人の背中に両手を回した。
……俺様で、意地悪で、口が悪くて。
意外と優しくて、意外と真面目で、たまに可愛い私の彼氏。
隣にいると居心地が良くて、何気ない会話が楽しくて、自然体でいられる。
見返りが欲しくて一緒にいるんじゃなくて、幸せにしたいから隣にいる。
どんな君も愛おしくて、それはきっとこれから先も変わらない。
変わることのない、愛。
「私も……愛してるよ」
頑張って伝えた私の気持ちに、幸せそうな笑みを浮かべる彼を見て、これなら私はずっと負けでいい、なんて思ってしまった。
今度こそ我慢することをやめた彼は、独占欲の印をつけていく。
それを受け入れるどころか、もっとして、とすら思っている私は、変態なのかもしれない……。
卒業してからまだ2年。
ようやく成人して、人生の一区切り。
まだまだ私たち2人での道は長い。
軽口叩き合って、喧嘩して、笑い合って。
たまにはこうして素直に気持ちも伝え合って。
楽しい思い出も嫌な思い出も全部。
2人で築き上げていこうね。
──────大人になってもまた君と。
【END】


