今は秘書の時間ではありません
「うーん…お前を呼んでくれって言って〜、紗奈ちゃんは定時で上がっていいって言った。そしたらこそこそ何してるのか、と言われたな。自分は必要ないんじゃないか、信頼関係は築けない、とも言ってたかな。」

「おい。それでなんて言ったんだよ。」

「何か言う前に出て行ったから何も言ってないけど…。」

「それでどうするんだ?」

「…」

「辞めますって言われて了承したと言うことか。」

「いや、そうとは言ってないけど。」

「でも引き留めてないんだろ。だからそう言うことだろ。」

「いやー、辞めて欲しいとは思ってないけど。」

「だーかーらー、どうしてすぐ引き留めないんだよ。今、俺たちが動いてることを話せないとしても何故フォローしないんだ。彼女ほどの秘書はなかなかいないぞ。」

俺は頭を抱えた。
彼女が辞めるって言い出した理由がよくわからない。

今の俺にとって信用できるのは智己と尚哉だけだと思っているからもちろん彼女には何も話していない。まだ話すつもりもない。

智己が言うように彼女は優秀な秘書だとは思う。

俺の居心地が良くなるように気を遣っている。仕事しやすいように前もって資料を集めてくれる。
電話対応も間違いない。
来客に対しても相手に不快を与えない。相手が求める回答を出せるよう俺に前もって説明してくれる。

確かに優秀だ…
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