今は秘書の時間ではありません

退職するのか?

俺たちはオムライスを堪能し帰社した。

午後は来客もありあっという間に定時となった。

秘書室から室長の智己と友永さんの声が聞こえてきた。

『友永さん。約束の1ヶ月まであと少しですがどうですか?残ってもらえませんか?』

『いえ、これは最初に決めた事ですから。私は退職の1ヶ月だけ秘書を続けますと言ったはずです。』

『朝から晩まで社長に振り回されて大変?』

『楽しい1ヶ月でしたよ。』

『でも決意は変わらない、と。』

『はい。』

なんてことだ。
すっかりそんな約束は忘れていた。今週末で彼女が退職するってことか?
このまま残ってくれるとばかり勝手に思っていた。
彼女には俺の働きが認められなかったってことか?
朝ごはんを毎日持ってきてもらい遠慮なく食べていたからか?
着替えの準備をさせたからか?
他にも思い出せばまだまだ俺の至らないところが出てくる。
ランチに行っても気の利いたことも言えなかった。
会話を楽しませることも出来なかったぞ…。

俺いいところないじゃないか。
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