今は秘書の時間ではありません
6時になり田中さんの運転で高級ホテルへ向かった。

「田中、帰りはタクシーを呼ぶから待機していなくて大丈夫だ。また明日頼む。」

「かしこまりました。」

頭を下げ、田中さんの車は走り出した。

エレベーターへ向かう社長を追いかけるようについていく。
最上階の夜景が見渡せると有名な鉄板焼きのお店に入って行く。

こんな凄いところ、初めて来たわ。
テレビの中で見る光景に心躍る。

「友永さん、こっち!」

社長に呼ばれシェフの前に社長と横並びで着席した。

「社長、どなたがお見えになられるんでしょうか?」

「友永紗奈さまだよ。」

「はぁ。」

「はぁーーー?!私?」

「そう。ここのお肉は美味しいから誘いたかったんだ。」

「社長。結構です。会食でないのなら失礼します。」

腰を上げる私を社長は咎める。

「シェフが待ってるよ。」

にこやかに笑うシェフに私も笑顔を返した。

「おまかせていいかな?」

「はい…」

私はうまくのせられ着席した。

社長とご飯を食べるなんて…
理由がわからないが社長と食べることになってしまった。

ただ、社長と食べるのは気まずいと思っていたのは最初だけ。
社長の話はとても面白く興味深い。
美味しいお肉に誘われてワインもついつい進んでしまった。
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