どうにもこうにも~出会い編~
この日は数か月にわたって取り組んできたプロジェクトが一段落ついて、少し余裕ができたところだった。今日こそはあの例の居酒屋に行けると思った。

いずれにしろ石原さんとの約束は果たすべく行く予定ではあったが。

 部下や同僚にも誘われて飲みに行くこともあるが、あの居酒屋で飲むときはひとりで飲むと決めていた。誰にも邪魔されず、物思いに耽りながら飲むのが好きだった。

昔は同僚とよく飲みに行っていたものだが、部長となった今では誘うことも誘われることも少なくなったような気がする。

俺と同年代の社員たちは家庭を持っている人が多いので、そういう彼らは真っ直ぐ家に帰るからだ。

時々部下に誘われることもあるが、最後までいることはあまりない。途中であとは若い者同士やってくれということで、いくらか置いてあとはよろしくと言って帰るのが常だ。最後までいてくださいと部下には言われるが、社交辞令といったところだろう。

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