どうにもこうにも~出会い編~
「好青年ですね、彼は。先輩というと、彼は院生ですか?」

「なんで、そんなウソつくんですか?」

「え?」

「なんでたまたま居合わせたなんて言うんですか?」

「勘違いされたら困るでしょう?」

「勘違いってなんですか。私といたら、恥ずかしいですか?」

「そりゃ、恥ずかしいというか…。こんな中年が若い女性と似つかわしくないでしょう」

「私は…今日、西島さんと、デートみたいじゃなくて、デートだと思ってたんですけど」

 彼女は絞り出すような小さな声で、途切れ途切れにそうつぶやいた。今にも泣き出しそうになっている。なんでそんな顔するんだ?

「西島さん…私…」

「そろそろ帰りましょう」

 俺は彼女の言葉を遮った。そのまま俺たちはショッピングモールをあとにした。

< 77 / 104 >

この作品をシェア

pagetop