もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜
はじめての失恋




「悪いけど付き合えない」



 たまたま、花宮先輩が告白されている現場を目撃してしまった。


 移動教室で第二校舎に移動する途中、屋根もなく日差しの強い中庭で行われていた告白。それは明らかに目立っていて、遠目からギャラリーがその様子を伺っている。


 私もドキリとして、その様子を伺っていた。あそこに『私の先輩を取らないで!』なんて突っ込んでいく勇気はないけど、もし花宮先輩が告白に頷いてしまったらという怖さから、見守るに徹するしかなかった。


 けど、花宮先輩はきれいさっぱり相手女子を振った。


 花宮先輩に告白したのは、上履きの色から二年生だということが分かった。しかもすごく可愛い。


 そんな可愛い先輩に告白されたというのに、花宮先輩の表情は無に近かった。あろうことか、今にも泣きそうな先輩を慰めることもなく、さっさと校舎に戻っていく。


 私といる時とは全く違う、これっぽっちも愛想を振りまかないその姿に、少しだけ動揺した。



「うわ〜、相変わらずすごいね。花宮王子の振りっぷり」
「勇気あるよね。いけると思ったのかな」



 ギャラリーの中からそんな声が聞こえて、思わず耳を傾ける。隣に立っていた高野さんが私の腕を引いたけど、立ち止まった私を見て小さく息を吐く。



「っていうか、花宮王子彼女いるのにね。まだあんな勇者いるんだね」
「多分今の彼女、なんていうか……普通? だから。私なら勝てるとか思っちゃうんじゃない?」


 
 ブスと言われなかったことにホッとしつつ、自分が彼女としてナメられているから先輩は告白されてしまうんだと少しだけ落ち込む。


 もう聞くのはやめようと歩き出した時、追い討ちをかけるようにギャラリーの言葉が耳に入ってきた。



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