もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜
もう、もらえない。



 日曜、朝9時半。駅前での待ち合わせ。今日はカラッとした夏空で、夕立の心配もないらしい。朝のニュースで、お天気キャスターが言っていた。
 

 花宮先輩を待たせたくなくて、早めに家を出る。玄関のドアを開けると、滑り込んできたぬるい風が頬を撫で、水色のシフォンワンピースがふわりと揺れた。


 最初で最後のデート。学校ではしないナチュラルメイクに、少しだけヒールのあるサンダルを合わせる。


 先輩の記憶に残る私が、少しでも可愛くありますように。いい思い出になりますように。そう願いながら、精一杯のオシャレをした。


 私は表情を引き締め、駅に向かい足を踏み出す。



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