もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜
時刻は8時50分。駅前は日曜だからか、いつもより少しだけ人が少なかった。
早く着き過ぎたから、先輩に飲み物でも買って待っていようかな。
そう思いながら、とりあえず待ち合わせの西口まで進んでいると、遠目からでもすぐに分かる、目立つ人物が立っていた。
「花宮先輩……?」
先輩は駅の入り口の横に立っていた。
高い身長に王子様のような柔らかな顔立ち、サラリと着こなしている無地のカットソーにデニム、胸の前に掛けた黒いウェストポーチ。シンプルなコーディネートなのに、先輩が着ているとモデルのように様になる。
ただスマホを見ながら立っているだけなのに、先輩だけが別世界の人間のようだ。気のせいか、周りの女性達から熱い視線を送られている。
そんな光景に思わず立ち止まり、その様子をじっと伺っていると、ふと顔を上げた先輩とばちりと視線が合ってしまった。
すると、先輩は目を大きく見開き、次の瞬間頬を赤く染めた。そして、それはもう嬉しそうに微笑みながら、こちらに大股で進んで来て、私の目の前でピタリと立ち止まる。