もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜



「せんぱ、い?」
「馬鹿だなぁ」
「えっ?」
「俺はね、ずっとずーっと、助けられたあの日から、奈湖だけを想ってきたんだよ」



 顔を上げると、先輩は泣きそうな、くしゃりとした優しい笑みを浮かべていた。



「あの日も、今日も、助けてくれてありがとう奈湖」
「……大したことしてないです」
「俺の気持ちも、俺の生き方も変えておいて?」



 ふわり、先輩の顔斜めに傾いて近付く。小さなリップ音と共に唇が重なり、すぐにそれは離れた。


 唇を抑えて惚ける私を他所に、先輩は喉を鳴らして笑った。



「これからは、こうならないようにお互いのこともっと話そう」
「は、はい」
「それで、さっきの返事だけど」



 先輩は私の両手を包み、花の咲いたような笑みをこちらに向け、蕩けるように甘い声で囁いた。



「俺も奈湖がとても大好きだよ」


「これからも俺だけに、奈湖のはじめてをちょうだい?」



 ────一度離れて、お互いの大切さを知り、より一層心は近くなる。


 もう私達は、一人になんて戻れない。




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