もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜



「後輩に注意されようと、違反してる方が悪いんだから私は間違えてない」
「間違えてないとしても、あんな騒ぎになったら元も子もな────」
「はぁもう、うるさい」



 高野さんの苛ついた声色と、あからさまにこちらを軽蔑するように視線に、私は固まる。立ち止まった高野さんは、冷たくこちらを見下ろしていた。



「あなたにだけは、言われたくないんだけど」
「……え?」
「私のこと、助けたつもりだった?いいことしたつもり?」
「それはっ」
「いつも教室だと、人の顔色伺って合わせてばかりだよね。だからさっきも、雰囲気読んで勇気出してみたんでしょ?」



 心底私を馬鹿にするような物言いに、ぐっと言葉が詰まる。そして、高野さんが私の態度を見て、隠していた様々なことを見抜いていたことに、驚きが隠せなかった。


 けど、さっきのは雰囲気を読んだわけではない。自分の心に従ったんだ。




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