若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「サイズ調整してください」

「若奥さま、失礼いたします」

 宝石専門の男性が私の指からエンゲージリングを抜いて、代わりにサイズを測る金具を通す。

「今日中にサイズをお直しさせていただきます。お洋服と一緒にお持ちいたします」

「ありがとうございます。では、よろしくお願いします」

 絢斗さんはソファから立ち上がり、まだ困惑している私の腕を引いて立たせる。

 そして、にこやかな多田さんの見送りでデパートをあとにした。

 この短時間で信じられないくらい売り上げをたたき出したのだから、担当者としては当然笑顔になるだろう。


 デパートを出て、着物姿の絢斗さんはスタスタ歩いていく。

 私が小走りにならないと追いつけない。

「若旦那さま、あんなにお金を使う必要はないのに」

 ふいに絢斗さんが立ち止まる。

「普通なら喜ぶんじゃないのか?」

「喜ぶ? それは綺麗な服やリングを買ってもらえるのは嬉しいけど、高いですもん。喜べないです」

「そうなのか? おかしいな」

 おかしいなって……?

 絢斗さんは不思議そうな顔で私を見つめてから歩き出す。
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