若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「ちょ、ちょっと、絢斗さんっ」
「君が喜ぶ姿を見たいわけじゃない。もらっておけばいい」
彼は私を喜ばせようとしてお金を使ったわけじゃない……。つまり、御子柴屋の若奥さまとしての必要な道具を買っただけ。
時々見せる優しさに、好意で購入してくれたのだと思い込んでいた。違うとわかって、なんだか気持ちが沈む。
そこからは絢斗さんに話しかけることもなく、黙ったままついていく。
五分くらいして、近代的なビルの一階に彼が入っていくのを見て、慌ててあとに続いた。
入った途端、ディスプレイされた着物が目に飛び込んできて、ここが御子柴屋の店舗なのだとわかった。
すごい……。
入店して即座に思った。
いい匂いがして、それが絢斗さんからいつも香るものだとすぐに気づいた。
「おかえりなさいませ」
奥から、父より年上に見える着物姿の男性が現れて、絢斗さんに言葉をかける。
「澪緒、俺の右腕の直治常務だ」
「里中澪緒です。よろしくお願いします」
「小坂直治と申します。若奥さま、どうぞよろしくお願いいたします。わからないことはなんでもお聞きください」
「まだ若奥さまじゃ――」
訂正しようとする私を絢斗さんは遮る。
「君が喜ぶ姿を見たいわけじゃない。もらっておけばいい」
彼は私を喜ばせようとしてお金を使ったわけじゃない……。つまり、御子柴屋の若奥さまとしての必要な道具を買っただけ。
時々見せる優しさに、好意で購入してくれたのだと思い込んでいた。違うとわかって、なんだか気持ちが沈む。
そこからは絢斗さんに話しかけることもなく、黙ったままついていく。
五分くらいして、近代的なビルの一階に彼が入っていくのを見て、慌ててあとに続いた。
入った途端、ディスプレイされた着物が目に飛び込んできて、ここが御子柴屋の店舗なのだとわかった。
すごい……。
入店して即座に思った。
いい匂いがして、それが絢斗さんからいつも香るものだとすぐに気づいた。
「おかえりなさいませ」
奥から、父より年上に見える着物姿の男性が現れて、絢斗さんに言葉をかける。
「澪緒、俺の右腕の直治常務だ」
「里中澪緒です。よろしくお願いします」
「小坂直治と申します。若奥さま、どうぞよろしくお願いいたします。わからないことはなんでもお聞きください」
「まだ若奥さまじゃ――」
訂正しようとする私を絢斗さんは遮る。