若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「もちろん、わかっている」
俺は少し離れた場所で招待客と談話中の祖母へ視線を向けてから、ボールルームを出た。
特に目的はない。多数の貪欲な視線に嫌気がさして、あの場所から離れたかったのだ。
ふらりと廊下を進み、ロビーへ出た。
そのとき、英語が俺の耳に飛び込んできた。
「素晴らしい! 日本人形のようだ! その美しい着物はなんと言うのですか!?」
声がした方へ顔を向けると、観光客らしきカメラを持った年配の外国人夫婦がいた。
声をかけられていたのは若い女性だった。檜扇や菊などの草花模様があしらわれた白地の着物に、総絞りと金彩加工を施した振袖を身にまとっている。
艶やかな黒髪は三つ編みにして片側に垂らし、花を散らしている。顔はひと目で誰もが美人だというくらい整っており、猫のようなくっきりした目が印象的だ。
その顔立ちからは冷たい印象を受けたが、彼女は夫婦ににっこり笑顔を向けた。途端に優しいイメージに変わる。
彼女は……!
俺は少し離れた場所で招待客と談話中の祖母へ視線を向けてから、ボールルームを出た。
特に目的はない。多数の貪欲な視線に嫌気がさして、あの場所から離れたかったのだ。
ふらりと廊下を進み、ロビーへ出た。
そのとき、英語が俺の耳に飛び込んできた。
「素晴らしい! 日本人形のようだ! その美しい着物はなんと言うのですか!?」
声がした方へ顔を向けると、観光客らしきカメラを持った年配の外国人夫婦がいた。
声をかけられていたのは若い女性だった。檜扇や菊などの草花模様があしらわれた白地の着物に、総絞りと金彩加工を施した振袖を身にまとっている。
艶やかな黒髪は三つ編みにして片側に垂らし、花を散らしている。顔はひと目で誰もが美人だというくらい整っており、猫のようなくっきりした目が印象的だ。
その顔立ちからは冷たい印象を受けたが、彼女は夫婦ににっこり笑顔を向けた。途端に優しいイメージに変わる。
彼女は……!