若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 姿を見せた俺たちに、翠子は美しい所作で頭を下げ挨拶する。

「翠子さん、お待たせしたわね。行きましょう」

 外に出ていた運転手が後部座席のドアを開け、祖母が乗り込む。俺は反対側に回り、祖母の隣に座り、翠子は助手席に。

「今日がお天気で本当によかったこと。庭園が素晴らしいホテルですからね」

 ハイヤーはホテルに向かって走り出し、車窓からは秋晴れといった言葉が相応しい青空が広がっていた。



 パーティー会場となるホテルのボールルームは窓が開け放たれ、庭園と行き来できるようになっている。

 時刻は、あと十五分ほどで十一時になろうとしていた。続々と招待客が現れ、挨拶に追われる。

「翠子、少し席を外す」

「わかりました。あの、若旦那さま、お時間にはお戻りください」

 翠子は俺がこのパーティーに気乗りしていないのがわかっているのだろう。開始時刻に主催者が不在にならないよう釘をさす。

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