若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 私は御子柴屋の若旦那に気に入られたの?

『君に決めた』という言葉の意味を考えているうちに、帯もあっという間に結んでしまった。

「これでいい」

 彼は一歩後退して、私のうしろを確認し満足げだ。

「苦しくはないか?」

 あ……、先ほどの苦しさがすっかりなくなっている。だからといって胸元や帯はきっちりとして、緩んでいるわけでもない。

「はい……すごいですね」

 称賛する私を尻目に、彼は窓際の椅子に腰を下ろすので、私は戸惑う。

「パーティーの主役なのに。早く戻った方がいいです」

「ここへ来てまだ三十分くらいだろう? パーティーが始まって一時間半ってところか。話がある。帯があるから君はベッドに座って」

 彼は綺麗な紫色の羽織の袖を少しずらし、スティール製の時計へ視線を落とす。そして父が渡した封筒を開ける。

 彼は中から手紙を取り出したが、それになにが書かれているのか私は知らない。

 手紙に視線を走らせた彼は再びそれを封筒にしまい、胸元に戻した。
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