若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「……ならば若旦那さまはここで寝て、私はベッドを使います」

「それは無理だな。俺もベッドの方がいい。それよりもその若旦那さまとは?」

「『私の前では若旦那さまとおっしゃい』と、おばあさまに言われたので」

「今は俺たちしかいないんだ。名前を呼べばいいだろう?」

 私は大きく首を左右に振った。

「使い分けるのは大変なので」

「わかった。じゃ、眠れないようなら来ればいい。おやすみ」

 絢斗さんはあっけなくドアを閉めていなくなった。

「眠れないようなら来ればいいって? 絶対に行かないと思っているのね?」

 もちろん、ここで眠れない一夜を過ごそうとも行けるわけがない。

 枕を布団の上に戻し、ゴロンと体を横たえる。

 あれだけのビジュアルで、女性が選り取り見取りに違いないのに、結婚したい相手がいなかったなんておかしくない?

 私はどうして絢斗さんの話に乗っちゃったんだろう……。父に失望させられたせい? 借金を払ってくれるから? 男性が信じられないのに家族が欲しいから?

 絢斗さんは私の借金が一億円だと思っている。そんな簡単に払えちゃうほど、彼はリッチなの?

 考えているうちに、いつの間にか眠りに引き込まれていった。

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