若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「おはよう。あなたはそのような服しか持っていないの?」

「キャリーケースの中はこんな服ばかりです」

 おばあさまは手でこめかみのあたりを押さえ、ため息を漏らす。

「翠子さん、病院の検査が終わったら、デパートで澪緒さんの洋服を見繕いなさい」

「かしこまりました」

 翠子さんが返事をしたとき、絢斗さんが入ってきた。彼も深緑色の着物を着ている。

「おはようございます」

「絢斗さん、おはよう」

 おばあさまは絢斗さんの姿に先ほどとは打って変わって上機嫌な表情になる。

 孫が可愛くて仕方がないのね。

 芳子さんと、あとから来た江古田さんが料理などを運ぶ。

「ところで、かしこまりましたとはなにが?」

 絢斗さんは袂を押さえながら、醤油の小瓶を手にして尋ねる。

「澪緒さんのお洋服が乏しいのでね? 病院のあと、翠子さんに一緒にデパートへ行って見繕うように言ったところなのよ」

「それなら、デパートへは俺が一緒に行く。翠子はいい。澪緒、わかったね?」

「えっ? はい」

 おばあさまは不満そうだったけれど、孫に面と向かってダメだとは言わない。

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