若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「翠子、病院が終わったら連絡してくれ」

「かしこまりました」

 翠子さんもふたりの主従関係がわかっているのだろう。絢斗さんに返事をしている。

 私としては、絢斗さんでも翠子さんでもどちらでもよかった。



 朝食後、翠子さんとタクシーに乗り、おばあさまが予約した病院へ向かう。

「翠子さん、おばあさまの秘書になってどのくらい経ちますか?」

「大学を卒業して就職先に慣れずに半年で辞めてからなので、かれこれ、六年でしょうか。でも、幼い頃から知っているので」

「小さい頃から知っている? なのに……」

 なぜあのきついおばあさまの秘書をしようなんて思ったの?と言いかけてやめる。

 私の言いたいことがわかったのか、翠子さんは微笑む。

「澪緒さまに対する口調は厳しいですが、本当はそうでもないんですよ。今はパーティーで大奥さまが目星をつけていた女性が選ばれず、あなたさまだったので、戸惑っていらっしゃるんです」

「翠子さんが若旦那さまの奥さんになれば丸く収まりそう」

 私が言葉にした途端、翠子さんはサッと私の方を向いて首を左右に振る。
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