麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない


 勢いよく腕を振り上げる。研ぎ澄まされた切先がとらえたのは銀の髪だ。

 片手で束ねた髪をバッサリ切ると、ひんやりとした風が首筋をなでた。


「私、男性に見えますか?」


 キリッと顔を決めてみせる。

 数秒後、笑いで肩を震わせた彼はあごに手を当て、困ったように眉を寄せた。


「俺には出会った頃から可愛らしい女性にしか見えませんが……芯の強さと覚悟は及第点でしょうね」


 パチンと彼が指を鳴らした途端、切った銀の髪が手の中で青い炎につつまれる。


「ひゃっ!?」

「大丈夫ですよ。熱くしないので」


 驚いて手を離すと、一瞬で手に持っていたはずの髪が炎の中に消え失せた。

 これは魔法? いや、でも彼は魔法使いではないと言っていた。どういう原理なのだろう?

 手品を初めて見た子どもみたいに胸が鳴り出す。

 私は閉じられた狭い世界しか知らなかった。きっとこの先に待つのは、私の予想をはるかに超えた出会いばかりだ。


「お手をどうぞ」


 休ませていた馬に乗ったハーランツさんが、優雅に手を差し出す。素直に甘えて手のひらを重ねると、力強い腕に軽々と引っ張り上げられた。

 私を背中からすっぽり覆うほどの体格差に、あらためて心臓が音を立てる。

 もう、後戻りはできない。

 彼の手をとったこのときが、謎多き美剣士との取り引きが成立した瞬間だった。

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