麗しの竜騎士は男装聖女を逃がさない
たしかに、通常、新人は年季の入った二段ベッドが二台並んだ狭い相部屋で過ごす。
五百人が入れる大食堂はいつも席取り戦争で、ザヴァヌ王が雇った一流シェフのビュッフェも早い者勝ちだ。
同期の中でひとりだけ良い環境で寝泊まりして、食事もゆっくりとれる私を良く思わないのは当然だろう。
だが、それは嫌がらせをしていい理由にはならない。
「聖女様。とりあえず、相手方のお名前はご存知ですか? 容姿の特徴でもいいですが」
「すみません、まだちゃんとご挨拶をしたわけではないのでわからないんです。次会ったら、お名前を聞いておきますね」
「これが聖女ムーブ……いえ、やはり俺も一緒にご挨拶をしましょう。そのほうが手間が省けます」
そんなやりとりの最中、壁の振り子時計が午後七時を知らせた。
そろそろ書庫の整理に向かわなければ、寝る時間が割かれてしまう。
一緒にやると言い出した彼を必死に振り払い、部屋を出た。
私が引き受けた仕事を手伝わせるわけにはいかない。